「出産体験を語る」助産診療センターの利用促進活動

助産診療センターでの出産件数をあげるため、カンタ―村の助産診療センターで母子保健教育と合わせて助産診療センターの利用促進活動を行いました。

自宅出産が当たり前だと感じている人に、助産診療センターで出産するメリットを理解してもらうのは至難の技。
そこで、実際に助産診療センターで出産した女性に、その体験とともにセンターで出産するメリットを語ってもらうことにしました。
協力してくださったのは4か月ほど前に助産診療センターで出産した34歳の女性。

彼女の話によると
以前は出産時に自宅で伝統的産婆さん(医療知識を持たない出産介助人)に介助してもらいましたが、今回は妊婦健診の際に助産師のすすめにしたがい助産診療センターで助産師に介助されて出産し、自宅での出産に比べてとても安全だと感じたとのことでした。
このようなリアルな体験をもとに助産診療センターでの出産に関する前向きな話を他の参加者と共有することができました。
今後は、出産体験の共有だけでなく、ツアー形式で助産診療センター訪問など予定しており、実際に見たり、聞いたりすることで助産診療センターの良さを肌で感じてもらい、助産診療センターの利用促進向上を図っていきます。

母子保健ボランティアの育成トレーニングを実施

母子保健ボランティアとは、村に住む女性の中から選出され、妊産婦への家庭訪問で保健知識強化を図り、保健センターの利用を促すという、事業の中でも大切な役割を担います。
この母子保健ボランティアを育成するトレーニングが2月末から3月にかけて行われました。
トレーニングは妊婦健診の知識とコミュニケーションスキルについての講義、ディスカッション、実践を織り込んだ3日間のトレーニングが保健センターで行われ、6月と7月には産後検診と乳児健診に関するトレーニング4日間を予定しています。
対象となるのは3つの保健センターにて管轄する村の母子保健ボランティアさん合わせて68名。当日は州保健局からトレーナーを招き、保健行政区母子保健担当者や保健センター助産師も同席しました。
■3日間のトレーニングの内容
【1日目】
カンボジアの母子保健の統計や新生児ケアが重要な理由についての講義、グループディスカッション(周産期の死亡を防ぐために必要なこととは何か)、事前テスト

ケーススタディのグループワークの様子
【 2日目】
妊婦健診の重要性について、フリップチャートの使い方、ケースを想定した保健教育の実施シミュレーション、母乳栄養の意義、母乳哺育介助手技の実演
【3日目】
村でのフィールドワーク(妊婦に対する保健教育の実践)、3日間のレビュー、事後テスト

(実際に村に行き、フリップチャートを使って妊婦さん相手に保健教育を行う様子)
参加した母子保健ボランティアさんたちは講義に集中し、積極的に話し合いをしたり、グループワークでは活発に意見を出し合う様子がみられました。
トレーニングの事前から事後のテストの平均がグループごとに30点以上アップしていました。

次回のトレーニングにも意欲的に参加し、頼もしい母子保健ボランティアさんが育ってくれればと思います。

取り残される妊婦さん

村で助産師さんが行っている予防接種の活動に同行させてもらいました。
今回訪問した村はGwe Pinという人口1220人、世帯数261のプロジェクト地域のうちの一つの村です。
プロジェクト地域のタッコンタウンシップでは、予防接種は各村、毎月1回行われます。
そのほとんどが保健・医療施設で行われるよりも、村に助産師さんたちが出向いて行うほうが多いのです。
また、この予防接種と合わせて村で妊婦健診を行うこともあります。予防接種は子どもだけではなく、妊婦さんも対象にしています。それは妊娠中に受けなければならない破傷風の接種が2回義務付けられているからです。そして、助産師さんが常駐するサブセンターから離れている地域に住んでいる妊婦さんたちが妊婦健診を受けられる機会でもあります。そこで出会った1人の妊婦さんの話がとても衝撃的だったので紹介します。
彼女は27歳で2人目の子どもを身ごもっています。
農家で働いており、この予防接種の日も農作業中に畑からコミュニティーのメンバーが連れてきました。
小学校を中退し、17歳の時に結婚し、18歳で妊娠しました。妊婦健診は一回も受けず、自宅で伝統的産婆の元、出産を試みましたが、陣痛が始まってからもなかなか生まれないため、病院に搬送され、出産しました。産後は会陰切開※の痛みのため、歩けなかったそうです。その後、3ヶ月後にその赤ちゃんは自宅で亡くなりました。病院に連れて行く時間もなく、息をひきとったそうです。
前回の出産の時になぜ1回も妊婦健診を受けていなかったかを尋ねたところ、助産師という存在自体を知らなかった。今回は、妊娠したら助産師に診てもらったほうがいいと、近所の人から聞いたため、助産師の元で一回目の妊婦健診をすでに受けたとのことでした。
助産師が村に訪問する際には村長から直接妊婦さんへ連絡が入ったり、村中に一斉放送をかけたりし、村の妊婦さんが助産師からのケアを漏れなく受けられるようにしています。
しかし、今回出会った妊婦さんは、前回の妊娠の時には居住地を転々としていたため、村長にも、助産師にも把握されなかったようです。今回は妊婦健診を受けられているようですが、彼女は携帯電話をもっていないため、助産師が自分の携帯番号を書いた紙を渡していました。彼女から健診に来ない限りは、助産師は何もサポートできない状況です。
このような事例から、保健サービスを本当に必要としている人々は、こちら側から把握する手段がなく、サービスがいかに届きにくい状況であり、取り残されてしまう存在であることがよくわかりました。
出産直前まで働かなければいけないと言っていた彼女。今回の出産での無事を願わずにはいられません。※会陰切開とは:出産の時に、赤ちゃんの頭が出やすくするために膣口と肛門の間を切開する方法
(海外事業部 志田保子)

助産師のスキルチェック その2

昨年度に引き続き、村で妊産婦のケアを行っている助産師のスキルチェック行いました。

ミャンマーの助産師は2年過程の助産師学校を卒業した後、すぐに村の地域保健センターや助産診療センターに配属され、1人で診療にあたらなければなりません。
卒後教育を受ける機会も少ないため、PHJでは政府の職員と一緒に助産師のスキルチェックを行っています。
チェックの方法は、チェックリストに基づき、妊婦健診と産後検診に関する知識と技術を助産師を監督する立場にあるタウンシップ保健師長と婦人保健訪問員が評価します。
妊婦健診のチェックでは村の妊婦さんに協力してもらい実際に健診を行いました。
評価の後には、再度見直しが必要な点に関して、一対一で助言をもらいます。

チェックを受けた助産師からは「このような機会はないので今後も定期的に行ってほしい」との声も。

今回で、PHJのプロジェクトエリアの助産師全員の妊婦健診と産後検診のスキルチェックが終了しました。
今まで行ったスキルチェックの結果をもとに、今後、助産師のトレーニングを行う予定です。

専門家によるワークショップ開催

(保健行政区のマネジメント能力向上へ)
農村部の保健センターや病院を統括する保健行政区。そのマネジメント能力や質は、保健センターでの妊産婦や乳幼児に対する継続ケアの提供に大きく影響します。
PHJは支援活動の一環として、保健行政区の職員と協働して、事業マネジメント、会議運営、情報 収集と分析の強化支援を行っています。
2016年12月末に岡本美代子先生(順天堂大学)を招き、PHJの支援地であるストゥントロン保健行政区の管理職メンバーを対象に「マネジメントの基本を学び次年度年間計画を再構築する」ことを主目的として、3日間のワークショップを実施しました。
ストゥントロン保健行政区からは、保健行政区長、副保健行政区長、母子保健担当チーフ、結核予防担当チーフが参加し、PHJからは現地スタッフ6名と駐在スタッフ3名が参加しました。
ワークショップは3段階で、1:良い事例を学んで議論する、2:マネジメントの基本概念を理解する、3:マネジメントの知識を活用し2017年の計画を立案する というものです。
まず、近隣のチョンプレイ保健行政区の視察では、地域の母子保健の課題とそれに対してどのような手段で問題解決を図ったか教示してもらいました。

(チョンプレイ保健行政区を視察し、母子保健担当チーフより経験談を教えてもらう。)

(チョンプレイ保健行政区の保健センターの前で、全員集合)
視察からの学びを活かし、ストゥントロン保健行政区の現状課題や強みを明確にすることができました。

(チョンプレイ保健行政区への視察を通して得られたことを、全員参加で大きなホワイトボードに提示し、整理をしました。)
上記の課題を効果的に解決するために、「マネジメントの基本」の講義でしっかり基礎知識を理解した上で、次年度年間計画の見直しをしてみました。
このことにより、明確な目標を設定し、いかにそれに繋がるロジックを考えて計画を立てるということが、期待する成果を生み出すために大事であるかを学びました。

(ストゥントロン保健行政区メンバーを中心に、次年度計画の見直しを行いました。)
このように段階的できめ細かなワークショップにより、参加者全員でマネジメントに対する理解を深め、能力を向上させることができました。
ワークショップを終えたストゥントロン保健行政区長は「マネジメントは難しかったが、具体的にわかりやすく説明してもらったので理解できた。保健センター長を集めてワークショップを開きたい。そうすると、今起こっている問題が解決できると思う。」という前向きなコメントをいただきました。
マネジメント能力の向上はもとより、PHJスタッフと保健行政区のメンバーがワークショップを通して課題を共有し協働して計画立案できたことで、一体感が生まれたことも大きな収穫だったのではないかと感じます。

助産診療センターの着工と母子保健ボランティア育成開始

【ミャイエ村 助産診療センターの着工】
ミャイエ村でいよいよ、助産診療センターの建築工事が始まりました。支援対象地域のミャイエ村では、助産診療センターの建物がないため、助産師さんの自宅での診療が行われています。
そこで、衛生的な施設での診療や健診、分娩が行えるようPHJでは助産診療センターを建築することにしました。

建築にあたっては、建築運営委員会を作り、村の人々が中心になって運営を行っています。

※助産診療センターとは
ミャンマーでは、村の人たちが病気やケガをしたり、妊婦健診や産後検診を受ける際には助産診療センターという村にある一次医療を提供する保健施設で助産師さんによる診療が行われています。
つまりミャンマーの村で働いている助産師さんは、妊婦のケアだけではなく、風邪や軽いケガなどの一般的な診療も行わなければなりません。
【ミャイエ村 母子保健教育のための母子保健ボランティアの育成】
ミャイエ村では助産診療センター建築と同時に、村で母子保健教育を行うための母子保健ボランティアの育成も始めました。ミャイエ村は市街地からとても離れた地域のため、出産に関する正しい知識を得られる機会が少ないのが現状です。母子保健ボランティアが、自分たちの住んでいる地域で母子保健教育を行い、多くの女性が出産に関する正しい知識を得られるようPHJはサポートしています。

母子保健ボランティアのトレーニングの様子

楽しく、気合も十分なボランティアさん達。


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