取り残される妊婦さん

村で助産師さんが行っている予防接種の活動に同行させてもらいました。
今回訪問した村はGwe Pinという人口1220人、世帯数261のプロジェクト地域のうちの一つの村です。
プロジェクト地域のタッコンタウンシップでは、予防接種は各村、毎月1回行われます。
そのほとんどが保健・医療施設で行われるよりも、村に助産師さんたちが出向いて行うほうが多いのです。
また、この予防接種と合わせて村で妊婦健診を行うこともあります。予防接種は子どもだけではなく、妊婦さんも対象にしています。それは妊娠中に受けなければならない破傷風の接種が2回義務付けられているからです。そして、助産師さんが常駐するサブセンターから離れている地域に住んでいる妊婦さんたちが妊婦健診を受けられる機会でもあります。そこで出会った1人の妊婦さんの話がとても衝撃的だったので紹介します。
彼女は27歳で2人目の子どもを身ごもっています。
農家で働いており、この予防接種の日も農作業中に畑からコミュニティーのメンバーが連れてきました。
小学校を中退し、17歳の時に結婚し、18歳で妊娠しました。妊婦健診は一回も受けず、自宅で伝統的産婆の元、出産を試みましたが、陣痛が始まってからもなかなか生まれないため、病院に搬送され、出産しました。産後は会陰切開※の痛みのため、歩けなかったそうです。その後、3ヶ月後にその赤ちゃんは自宅で亡くなりました。病院に連れて行く時間もなく、息をひきとったそうです。
前回の出産の時になぜ1回も妊婦健診を受けていなかったかを尋ねたところ、助産師という存在自体を知らなかった。今回は、妊娠したら助産師に診てもらったほうがいいと、近所の人から聞いたため、助産師の元で一回目の妊婦健診をすでに受けたとのことでした。
助産師が村に訪問する際には村長から直接妊婦さんへ連絡が入ったり、村中に一斉放送をかけたりし、村の妊婦さんが助産師からのケアを漏れなく受けられるようにしています。
しかし、今回出会った妊婦さんは、前回の妊娠の時には居住地を転々としていたため、村長にも、助産師にも把握されなかったようです。今回は妊婦健診を受けられているようですが、彼女は携帯電話をもっていないため、助産師が自分の携帯番号を書いた紙を渡していました。彼女から健診に来ない限りは、助産師は何もサポートできない状況です。
このような事例から、保健サービスを本当に必要としている人々は、こちら側から把握する手段がなく、サービスがいかに届きにくい状況であり、取り残されてしまう存在であることがよくわかりました。
出産直前まで働かなければいけないと言っていた彼女。今回の出産での無事を願わずにはいられません。※会陰切開とは:出産の時に、赤ちゃんの頭が出やすくするために膣口と肛門の間を切開する方法
(海外事業部 志田保子)

助産師のスキルチェック その2

昨年度に引き続き、村で妊産婦のケアを行っている助産師のスキルチェック行いました。

ミャンマーの助産師は2年過程の助産師学校を卒業した後、すぐに村の地域保健センターや助産診療センターに配属され、1人で診療にあたらなければなりません。
卒後教育を受ける機会も少ないため、PHJでは政府の職員と一緒に助産師のスキルチェックを行っています。
チェックの方法は、チェックリストに基づき、妊婦健診と産後検診に関する知識と技術を助産師を監督する立場にあるタウンシップ保健師長と婦人保健訪問員が評価します。
妊婦健診のチェックでは村の妊婦さんに協力してもらい実際に健診を行いました。
評価の後には、再度見直しが必要な点に関して、一対一で助言をもらいます。

チェックを受けた助産師からは「このような機会はないので今後も定期的に行ってほしい」との声も。

今回で、PHJのプロジェクトエリアの助産師全員の妊婦健診と産後検診のスキルチェックが終了しました。
今まで行ったスキルチェックの結果をもとに、今後、助産師のトレーニングを行う予定です。

専門家によるワークショップ開催

(保健行政区のマネジメント能力向上へ)
農村部の保健センターや病院を統括する保健行政区。そのマネジメント能力や質は、保健センターでの妊産婦や乳幼児に対する継続ケアの提供に大きく影響します。
PHJは支援活動の一環として、保健行政区の職員と協働して、事業マネジメント、会議運営、情報 収集と分析の強化支援を行っています。
2016年12月末に岡本美代子先生(順天堂大学)を招き、PHJの支援地であるストゥントロン保健行政区の管理職メンバーを対象に「マネジメントの基本を学び次年度年間計画を再構築する」ことを主目的として、3日間のワークショップを実施しました。
ストゥントロン保健行政区からは、保健行政区長、副保健行政区長、母子保健担当チーフ、結核予防担当チーフが参加し、PHJからは現地スタッフ6名と駐在スタッフ3名が参加しました。
ワークショップは3段階で、1:良い事例を学んで議論する、2:マネジメントの基本概念を理解する、3:マネジメントの知識を活用し2017年の計画を立案する というものです。
まず、近隣のチョンプレイ保健行政区の視察では、地域の母子保健の課題とそれに対してどのような手段で問題解決を図ったか教示してもらいました。

(チョンプレイ保健行政区を視察し、母子保健担当チーフより経験談を教えてもらう。)

(チョンプレイ保健行政区の保健センターの前で、全員集合)
視察からの学びを活かし、ストゥントロン保健行政区の現状課題や強みを明確にすることができました。

(チョンプレイ保健行政区への視察を通して得られたことを、全員参加で大きなホワイトボードに提示し、整理をしました。)
上記の課題を効果的に解決するために、「マネジメントの基本」の講義でしっかり基礎知識を理解した上で、次年度年間計画の見直しをしてみました。
このことにより、明確な目標を設定し、いかにそれに繋がるロジックを考えて計画を立てるということが、期待する成果を生み出すために大事であるかを学びました。

(ストゥントロン保健行政区メンバーを中心に、次年度計画の見直しを行いました。)
このように段階的できめ細かなワークショップにより、参加者全員でマネジメントに対する理解を深め、能力を向上させることができました。
ワークショップを終えたストゥントロン保健行政区長は「マネジメントは難しかったが、具体的にわかりやすく説明してもらったので理解できた。保健センター長を集めてワークショップを開きたい。そうすると、今起こっている問題が解決できると思う。」という前向きなコメントをいただきました。
マネジメント能力の向上はもとより、PHJスタッフと保健行政区のメンバーがワークショップを通して課題を共有し協働して計画立案できたことで、一体感が生まれたことも大きな収穫だったのではないかと感じます。

助産診療センターの着工と母子保健ボランティア育成開始

【ミャイエ村 助産診療センターの着工】
ミャイエ村でいよいよ、助産診療センターの建築工事が始まりました。支援対象地域のミャイエ村では、助産診療センターの建物がないため、助産師さんの自宅での診療が行われています。
そこで、衛生的な施設での診療や健診、分娩が行えるようPHJでは助産診療センターを建築することにしました。

建築にあたっては、建築運営委員会を作り、村の人々が中心になって運営を行っています。

※助産診療センターとは
ミャンマーでは、村の人たちが病気やケガをしたり、妊婦健診や産後検診を受ける際には助産診療センターという村にある一次医療を提供する保健施設で助産師さんによる診療が行われています。
つまりミャンマーの村で働いている助産師さんは、妊婦のケアだけではなく、風邪や軽いケガなどの一般的な診療も行わなければなりません。
【ミャイエ村 母子保健教育のための母子保健ボランティアの育成】
ミャイエ村では助産診療センター建築と同時に、村で母子保健教育を行うための母子保健ボランティアの育成も始めました。ミャイエ村は市街地からとても離れた地域のため、出産に関する正しい知識を得られる機会が少ないのが現状です。母子保健ボランティアが、自分たちの住んでいる地域で母子保健教育を行い、多くの女性が出産に関する正しい知識を得られるようPHJはサポートしています。

母子保健ボランティアのトレーニングの様子

楽しく、気合も十分なボランティアさん達。

安全なお産を応援するギフトセットを配布開始

保健センターや医療機関での定期的な妊婦健診や分娩、産後検診を奨励し、安全なお産を少しでも増やすため、
妊産婦さんへのギフトセット配布を1月よりスタートしています。
ギフトセットは2セットあり、妊婦健診・分娩奨励用と、産後検診・家族計画奨励用となります。
産前の検診や産後のケアや家族計画は、次のお産や今後のお母さんの健康にも大きく関係します。
奨励用のギフトセットは事前に購入し、各保健センターで配布してもらうためにまとまった個数を渡しに行きました。


さらに、地域住民に対してもポスターを使って奨励セットについて説明し、保健センターや医療機関での妊婦健診、分娩、産後検診をすすめています。

さて、今後保健センターでの健診、出産、産後の検診が一気に増えることを期待します。
こちらの活動については2月中旬より日本の皆様からの支援を募る予定です。

助産師のスキルチェックを行いました。

現地の母子保健状況を把握する一つの目安として、
助産師のスキルチェックを
2つの助産診療センターにて行いました。
チェックの対象となったのは14名の正助産師さん。
赤いロンジーをはいた助産師さんが、産前健診・産後健診で診るべきポイントや検査がきちんとできているかを
タウンシップの保健婦長が評価しました。

保健センターの補修・改善工事が進行中

PHJの活動地にある保健センターは、老朽化などの影響で利用者や働く人にとって危険な状態のままに使われているところがあります。
保健センターに関わる誰もが安心して利用したり、働いたりできるように現在2か所で補修や改善工事が進んでいます。
【天井改修工事:アレアッタノー保健センター】
センターに入ってすぐの玄関部分の天井。何かのきっかけで天井が落ちてきそうなほど無数の穴があいています。

工事中の様子

工事終了後、美しく生まれ変わった天井のもとで、話し合いが行われています。取り付けられた電燈、実は施工してくれた男性が、奥様がこのセンターで出産したとのことで寄贈してくださいました。

【土手埋め立て工事:クポッタゴン保健センター】
道路が土手の上にあり、保健センターとの間が谷のようになっているため、道路から保健センターに渡るときに転がり落ちる危険がありました。とくに夜間など周囲が暗いときなどは道路や橋などの境目が見えずらく危険が増します。

周りを煉瓦で囲い、埋め立て工事を始めたところ。

埋め立てがほとんど完了しています。これなら安心して保健センターに行けますね。


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