妊婦健診——安全なお産を迎えるために

イエエイ村での巡回妊婦健診の様子

ミャンマーでは、地域の助産師が自ら管轄地域内の各村を巡回し、村の妊婦さんの健診を行います。
2017年にPHJが事業を開始した時点で、ミャンマー保健スポーツ省が当時推奨していた4回以上の健診を受診した妊婦さんの割合は約54%でした。妊婦さんの約半数が十分な健診を受けないまま、出産に臨んでいるということになります。
PHJは、母と子の健康を守り、安全なお産を迎えてもらうため、妊婦健診の受診を支援してきました。

具体的には、助産師の巡回妊婦健診活動を定期化させ、地域への周知徹底をしたり、各村で出産に関わる知識を地域住民や妊婦へ普及させる活動を、村の母子保健推進員や助産師が中心となって行うことを支援してきました。

上の写真はイエエイ村での巡回妊婦健診の様子です。36人の妊婦が参加し、ひとりの助産師が順番に健診を行いました。母子保健推進員が、場所の準備や活動情報の周知、身長・体重測定等をサポートします。

健診等の記録をモニタリングするスーパーバイザー(右)と説明する助産師(左)

さらに、受診した妊婦の情報が正しく記録されているか、助産師のスーパーバイザーが定期的にモニタリングする仕組みづくりを行ってきました。

PHJスタッフが診療や治療に関わるわけではありませんが、このような取り組みを経て、2020年11月時点で妊娠期間中に4回以上健診を受診した妊婦さんの割合は、約73%まで増えました。
健診の場で異常が発見された妊婦さんは、母子保健推進員や村長と協力してすぐに病院へ搬送されるなど、妊娠中の異常の早期発見・早期治療につながっています。さらに、健診や知識普及の教育等で医療者と地域住民との交流が増えたことで、助産師と地域の人々との信頼関係が強まり、地域の人々がより安心して医療機関を受診できるようになってきました。

出産は、女性、家族、そして地域全体にとって、とても大切な出来事です。赤ちゃんと女性が安心して安全に出産し、健康な赤ちゃんを育んでいくことができるよう、医療者と地域が協力して支えていくことのできる仕組みが、事業地では広がっています。
新型コロナウイルスの感染拡大の中でも、母子の健康を守るために、人々が支え合い、助け合うミャンマーの人びとと学び合いながら、
より多くの人の健康が守られる仕組みづくりを今後も支援していきます。

【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

アジアの動物カレンダー2016

各月のカレンダーの見本です。クリックすると拡大して表示されます。

1月 2月 3月
4月 5月 6月
7月 8月 9月
10月 11月 12月
表紙

▲表紙

裏表紙

▲裏表紙

裏表紙2

栄養研修の開催

医療人材の栄養に関する知識を高めるため研修を行いました。

保健省スタッフがファシリテーターとして、カンボジアの子どもの栄養状態、栄養不良の定義、SAMの定義・ケアの仕方、子どもの身体測定の仕方、簡易的に栄養失調をみる上腕周囲径(MUAC)を計る方法、地域の栄養状態の調査手法、フォローアップ方法などの講義を行いました。
受講者は保健センタースタッフ(ストゥントロン保健行政区管轄の全12HC)、保健行政区スタッフ、州保健局スタッフ、地方病院スタッフでした。

研修の2日目には、実際に村でMUAC測定したところ、中度急性栄養不良の子どもが多数確認されました。今後は母子保健ボランティアの栄養の啓発活動の研修を行い、住民への栄養に関する知識向上を目指します。

研修の事前テストは8点(平均)と低かったが、事後テストは83点(平均)と知識向上が見られました。

トピック記事一覧

事業完了後も地域での活動継続を目指して

PHJは、地域保健を支える補助助産師と助産師の会議の開催をサポートしています。
今回は、これまでの事業3年間でそれぞれの管轄地域の母子保健指標がどのように変化してきたかを振り返り、事業完了後の活動継続方法について話し合いました。
会議には、助産師や補助助産師の他、タッコン郡保健局スタッフや地域保健センタースタッフも参加し、地域医療を担う医療スタッフたちがそれぞれの立場から意見を交わし、具体的な活動継続計画を話し合いました。

母子保健指標の推移を共有
:ミャウッメイ地域保健センター

さらに、タッコン郡保健局スタッフや地域保健センタースタッフよりCOVID-19関連の正しい情報が伝えられ、手洗い等の感染予防行動の喚起があらためてなされました。
感染予防のための布マスクの使用方法や衛生管理方法も、動画やデモンストレーションを通して指導されました。

布マスクの洗浄方法をデモンストレーションする補助助産師:
ミャウッメイ地域保健センター

これまでの会議の継続が補助助産師と助産師の関係性の強化へつながり、助産師と補助助産師が村における保健活動を協働で実施する体制ができています。

コロナ禍だからこそ重要な母子保健推進員という役割

3月23日に初めてミャンマー国内での新型コロナウイルスの感染者が発表されてから、農村部では人々は感染を恐れて医療施設での受診や出産を控えたり、医療者との接触を恐れる傾向がありました。
そのため予防接種を受けなかったり、必要な保健医療サービスを受けないことへのリスクが増しています。
感染を正しく恐れ予防策を講じるためには正しい情報を一人ひとりへ伝えることが大切です。

どのような状況でも村の医療を支える核となるのが助産師ですが、一人で多くの村を管轄しているためすべての住民にきめ細かく対応することは容易ではありません。
そこで助産師と村々をつなぎ、村人へ正しい情報や医療サービスの提供をサポートする役割が、母子保健推進員が活躍しています。
(母子保健推進員は、2018年にミャウッメイ地域で、2019年にはニャオルン地域とアイジェ地域で、PHJの支援により各地域主体で選出され、2日間の研修で基礎的な母子保健について学んだ後、医療活動を開始しました。)

定期的に実施している助産師と母子保健推進員の会議では、地域の母子に関する情報の共有や、住民への手洗い方法周知のためのデモンストレーションの練習などを通して、地域と医療の橋渡しとして助産師と関係を築いてきました。COVID-19感染拡大予防のため、会議は3月から延期されていましたが、7月から少人数ずつの会議として感染予防対策を講じたうえで、再開をしました。

8月の会議の中では、助産師が中心となり、母子保健推進員が以前研修で学んだことの振り返りをしました。妊婦さんや新生児の危険兆候についての知識の振り返りや、基本的な感染予防対策の実習等を行いました。母子保健推進員としての知識をアップデートする機会ができたことにより、自信をもって活動に取り組めることを喜ぶ声が聞かれました。また、プロジェクト完了後も定期的に助産師との会議や母子保健推進員の知識の更新を行うため、助産師の監督者であるヘルス・アシスタントがサポートしていきます。

タッコン郡内の全助産師を対象にスキルの振り返り

世界中でCOVID-19パンデミックの収束が見えないなか、ミャンマーでは7月21日までに341名の感染が報告されています。感染拡大予防のための各種規制を引き続き講じつつ、政府当局は通常の保健医療活動を少しずつ再開し始めています。
徐々に再開される保健医療活動に備え、あらためて地域の助産師の知識や技術を確認し、アップデートする機会を設けました。

以前タッコン郡内の全助産師を対象に実施したスキル・モニタリングの結果を、スーパーバイザーである婦人保健訪問員から各助産師へ、フィードバックしてもらいました。
婦人保健訪問員が地域の助産師のスキルを指導する機会は限られているため、助産師にとっては、あらためて自身の技術を振り返ることのできる貴重な機会となりました。
また、技術に加え、妊婦健診・出産介助・産後検診など、助産師として必要な知識が定着していることを確認するためテストも実施しました。

スキル・モニタリングの振り返りと知識の確認(ミャウッメイ地域)

COVID-19の感染拡大を予防するため、これまで、助産師を含む医療者が総出で検疫体制の強化に取り組んできました。通常の業務に加え、そのようなCOVID-19対応による精神的負担や、業務負担は大きく、医療者にとっては厳しい状況です。こうしたなかでも住民の命や健康を守るために、前向きに自身の知識・技術の維持・向上に勤しむ助産師たちが健康に業務にあたることができるよう、引き続きサポートしていきます。

個人の方からマスクを寄贈いただきました

新型コロナウイルスが世界で拡大するなか、カンボジアは様々な政府の政策により、国内での感染は抑えられているようにみえます。しかし、いまだに村に海外からの帰国者がおり、保健センターでは通常の業務に加え、海外からの帰国者のフォローアップ・チェックアップを行っているため、医療関係者は感染の不安と緊張感の中で業務しています。そのような中ありがたいことに、日本の個人支援者からマスクの寄贈の申し出をいただきました。事業地内の医療機関でのマスクのニーズが高かったことから、寄贈いただいたマスク525枚を4保健センターに配布しました。

ピアムコスナー保健センター
マスクをつけて小児の測定
クボッタゴン保健センター
アレアッタノー保健センター
オームルー保健センター
ストゥントロン保健行政区長

【4保健センター管轄のストゥントロン保健行政区長からのメッセージ】
今回は保健センターにマスクを寄付していたき、本当にありがとうございました。保健センタースタッフは最前線でコロナ感染の不安を抱えながら業務をしております。そのような状況の中、遠い国の日本からマスクの寄付があり、皆心強く思っていることでしょう。その他、日本からの支援を常に感謝しています。日本の支援により、医療機関関係者のスキルや医療設備が向上され、より人々が健康に暮らせる環境が整ってきました。

妊婦健診・産後検診普及の啓発活動のリフレッシュトレーニング

妊婦健診・産後検診の受診率向上の啓発活動をより効果的に進めるために保健ボランティア対象のリフレッシュトレーニングを実施しました。

成果を測る事前テスト(クボッタゴン保健センター)
家族計画について説明(アレアッタノー保健センター)
子どもの成長に関しての講義(クボッタゴン保健センター)
人数の関係で小学校の教室を借りての研修(ピアムゴスナー保健センター管轄)
休憩時間はスナック(バンチェフというクレープのようなもの)で交流
研修を受けたピアムゴスナー保健センター管轄の保健ボランティアさんたち

【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

布マスクを地元で製作し、ボランティアへ配布

ミャンマーでは雨季に入り、雨の日が続いています。

ミャンマー保健スポーツ省は、COVID-19感染拡大予防のため、村での集団妊婦健診や予防接種活動を中止していましたが、6月より予防接種活動を再開し始めました。
こうした医療サービスは、妊婦さんや赤ちゃんのいのちを守る、大切な医療サービスです。
しかし、同時にCOVID-19の感染の恐怖は、ミャンマーの村びとたちの間にも広がっています。出産を控えた妊婦さんの中には、医療施設での感染を恐れて自宅での出産を希望する妊婦さんも増えています。

地域保健を担う助産師たちは、医療施設ではしっかりと感染予防措置を講じているため安全な医療を受けられることを、村びとたちに訴えかけています。
しかし、医療施設から遠く離れた地域に住む人びとにとって、医療者や医療施設は遠い存在であることも事実です。そんな中、村に居住している母子保健推進員が妊産婦さんの各家庭を訪問して相談に乗ったり、地域の助産師と情報を共有して妊産婦へ必要な医療フォローアップを促したりといった、医療者と村びととの間の橋渡しの役割を果たしています。

このような母子保健推進員や補助助産師は政府職員でなくボランティアであるため、政府からの個人用防護具の配布は期待できません。
そこで、PHJは、母子保健推進員や補助助産師さんたちが安全に村びとの支援活動にあたることができるよう、布マスクの配布支援を行いました。

婦人保健訪問員から補助助産師に布マスクを手渡す様子(シュエミョーステーション病院)

布マスクは、ミャンマー保健スポーツ省が定めた仕様のもの計904枚を、事業地近くの縫製業者へ発注しました。地元で製作されたマスクが村びとたちやボランティアの健康を守るために配布されました。ミャンマーの村では人々が助け合って生活している様子をよく見かけますが、COVID-19の影響下にある今も、こうした助け合いの仕組みによって必要な支援が必要な場所に届くよう、支援しています。
布マスク配布時には、助産師がマスクの正しい使用方法を説明するとともに正しい手洗い方法や身体的距離を保つこと等の感染予防行動を、改めて各ボランティアへ指導しました。

マスクの使用方法等を教育する助産師と母子保健推進員(ミャウミェイ地域)

COVID-19感染への不安が消えない今、安心して元気な赤ちゃんを産むことができるような医療体制を整えるため、各村の母子保健推進員や補助助産師と医療者が協力して、地域の人々の健康も守ることができるよう、これからも支援していきます。
【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】


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