助産師会議の再開

6月27日と28日の2日間にわたり、ソトニクム保健行政区にて助産師会議(MCAT会議:Midwife Coordination Alliance Team会議)を開催しました。この会議は、助産師を中心とした関係者が、妊娠や出産に関わる課題や状況を共有したり、解決策を模索します。お産の現場に直結する重要な場でありながら様々な理由により開催されていませんでしたが、保健システム強化支援の活動として会議を再開しました。

会議には、シェムリアップ州保健局から2名、シェムリアップ州病院から4名、ソトニクム保健行政区から3名、リファラル病院から4名、保健センターから60名のスタッフが参加しました。

州保健局母子保健部長と保健行政区母子保健部長がファシリテーターとして会議を進行しました。 まず、ファシリテーターと州病院の医師から、分娩後異常出血についての講義が行われました。講義では、その予防と処置について説明されました。また、緊急搬送時にショックパンツを使用することで、出血量を減らし、ショック状態を改善することができることが説明されました。ショックパンツは、脚や腹部に空気を入れて圧迫することで血圧を上げる装置で、その使い方や注意点についても解説がありました。

次に、緊急搬送の現状についての情報共有が行われました。参加者は、自分たちが経験した事例をもとに、緊急搬送時に遭遇した問題や対処法を発表しました。問題として挙げられたのは、搬送先の確保や連絡の不十分、患者や家族の同意や費用負担の問題、交通手段や道路状況の悪さなどでした。対処法として提案されたのは、リファラル病院と連携して搬送先を速やかに確認すること、患者と家族に緊急搬送の必要性や費用負担の方法を説明すること、交通手段や道路状況に応じて最適なルートや時間帯を選択することなどでした。
会議では、参加者が積極的に意見交換を行い、リファラル・システム強化のための具体的なアクションプランも作成しました。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

現地事務所での事業オリエンテーションの実施

新しい事業の開始と共に、PHJカンボジア事務所が新体制になりました。
新しいスタッフも含めて、チーム全員で事業オリエンテーションを行いました。

事業を円滑に進め、活動の効果をもたらすためには、カンボジア事務所のチームワークが不可欠です。そのため、チーム全員がベクトルを合わせ、共通の理念や考えのもとに行動することが大切です。
そこでカンボジア事務所スタッフ全員で意見交換の場を設けました。

例えば、このようなテーマでの意見交換。

PHJの取り組みは「援助」ではなく現地の人々の自立を目的とした支援活動。
現地の人々が支援に「依存する」ことにならないように配慮しなければなりません。
この点について、「活動をするときに必ず目的を明確にすること」「現地の人々の自尊心向上に努めること」「自分たちが見本となること」などの意見があげられました

こうした意見交換を通して、カンボジア事務所のチーム全員が事業を進めるうえでの指針を確認し、これからの活動を進めてまいります。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

シェムリアップ州における新事業の開始に向けて

4月にコンポンチャム州からシェムリアップ州にPHJカンボジア事務所を移転し、
「シェムリアップ州ソトニクム保健行政区における安心安全なお産のための保健システム強化支援事業」を開始しました。
4月末に本事業のキックオフミーティングをシェムリアップ州保健局で開催しました。

州保健局長と州保健局スタッフ、ソトニクム保健行政区長と母子保健担当スタッフ、そして、リファラル病院長と保健行政区の保健センター長など事業の関係者が参加しました。

プロジェクト目標とモニタリング指標、活動内容と実施タイムテーブルを発表した後、
参加者からは研修の参加人数や実施日程に関する質問がありました。
また、各保健センターにおける課題が共有され、具体的な活動内容についての意見交換も行われました。
今後もカウンターパートとのコミュニケーションを図り、連携してプロジェクトを進めていきます。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

活動の持続性と自立のために

2019年10月に開始した「子どものケア支援ネットワーク強化事業」は本年3月末に完了しました。

PHJの支間が終了した後も、活動を継続していくための会議が保健行政区にて3月半ばに開催されました。
会議には、保健行政区から5人、リファラル病院から3人、そして4つの保健センターから8人が参加しました。
これまでの活動を振り返り、成果を確認した後、子どもの健康な成長発達が促進される環境を維持するうえでの改善策や工夫について話し合われました。

保健センターの24 時間サービスの確立・提供、保健センターの利用促進、村での保健教育の継続を実現していくため、
地域行政当局と保健センター、保健センターとコミュニティや保健/母子保健ボランティア間の連携や協力関係の強化、そして、コミュニティとのネットワークは、
今後も強化していく取り組みとなりました。
これらの取り組みは保健行政区が中心となって今後も地域の健康を守るためにけん引していくこととなります。


【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しました。】

家庭訪問で一人ひとりに寄り添った母子保健教育を

母と子の健康改善のために、母子保健ボランティアさんによる保健教育を支援しています。

地域住民を対象にした集団による保健教育とともに、
彼女たちは戸別に家庭を訪問して、妊婦さんや産後のお母さんだけでなく、家族も一緒に母子保健教育を行います。
一人ひとりの健康状態を確認し、妊娠・出産・子育ての悩みや不安の相談に応え、必要に応じて保健センターに紹介します。
個々の状況を理解しながら、一人ひとりに寄り添った保健教育活動を行います。


以前にもお伝えした妊産婦の健康を害する恐れのある風習についても、家庭訪問で妊産婦だけでなく家族にもお話しをすることで、健康に対する家族の理解も進み、意識や行動の変化が起こりやすくなっています。

また一つのご家庭にご近所の母子に来てもらって保健教育を実施することもあります。ご近所のお母さん同士のつながりも大切ですね。

【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

成田コスモポリタンロータリークラブ様の現地視察

2月20日と21日、成田コスモポリタンロータリークラブ様が、現地視察のためにカンボジア・コンポンチャム州の事業地を訪問しました。「地方農村遠隔地における感染症予防プロジェクト」を支援してくださっています。

同クラブは、コンポンチャム州の保健医療の分野にPHJを通して10年にわたり支援をしてくださっています。長年の支援への感謝の気持ちを込めて、事業地のパートナーであるストゥントロン保健行政区で寄贈式を行いました。

長年のご支援に感謝する記念プレートの授与

農村地の衛生キャンペーンにはクラブの方も参加し、保健センタースタッフが行う手洗い指導のデモンストレーションも行っていただきました。

健康に暮らしていくための衛生に関する基礎知識を受けることができました。

石鹸やタオル、洗剤などの衛生グッズを配布しました。

このようなPHJの地域レベルでの草の根の活動に参加していただき、
寄付が活かされている現場の実情や取り組みを体験を通して知っていただく機会となりました。

子どもの健康状況のきめ細かな評価と把握のために

保健センター(医療施設)では、一人ひとりの子どもの健診結果を記録簿に記入し、管理しています。
記録簿をみれば、成長、発達の様子を経過とともに把握でき、より適切な指導やケアにつながります。

健診の様子
乳幼児健診の記録簿

この健診情報の記録簿の仕様はカンボジア国内で統一されていますが、最近、仕様が変更しました。変更点は乳幼児の栄養状態を評価する項目が追加されたこと。子どもの健診時に栄養状態を確認することで、栄養不良の予防や栄養状態の改善に役立てることができます。

コンポンチャム州の保健局の要請で、PHJの支援を通して医療者向けに新仕様の記録簿の解説と書き方に研修が1月末に開催しました。保健省のスタッフが講師となり、州保健局、ストゥントロン保健行政区、保健センター、地方病院のスタッフが研修を受けました。

新仕様の記録簿の研修


地道な研修ですが、乳幼児の健康状態の改善に向けた大きな一歩と言えます。
【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

風習に対する考え方や行動を改善するには

コンポンチャム州の事業地には妊産婦の健康を害する恐れのある風習が残っていました。
たとえば、ベッドの下に火をおこした炭を置いて母子を温める、冷えるときに妊産婦に飲酒をさせる、など。
保健センターにもこうした風習を改善するための啓発ポスターが貼ってあります。

PHJが進めている保健教育でもこうした風習に対する考え方を見直すように地域住民に求めています。しかし風習は地域に定着しているため、行動を改善するには時間がかかります。
そこで鍵となるのが、PHJが育成した母子保健ボランティアさんによる保健教育です。彼女たちは戸別に家庭を訪問し、妊産婦を含めた家族を対象に母子保健教育を行います。

はじめは風習が健康を害する可能性を説明しても家庭によっては聞き入れてもらえないこともありましたが、彼女たち母子保健ボランティアが継続的に訪問することで、意識や行動が良い方向に変化しています。

PHJの事業期間は残りわずかとなりますが、コミュニティの健康改善に寄与する母子保健教育が継続されるよう、母子保健ボランティアの自立支援を進めてまいります。

【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

業務の改善につながる保健センタースタッフの会議とは

保健センターでは月に一度会議を開き、提供するサービスや勤怠に関する問題点を共有し、改善に向けた話し合いが行われます。
会議では来院状況や勤怠といったセンター内の情報だけでなく、地域住民の健康状況や保健センターに対する意見などもこの場で共有されます。

以前は会議でスタッフが発言しない傾向にありましたが、最近では発言が増え、改善に向けた話し合いができるようになっているため、会議を重ねることでよい変化が生まれています。

たとえば、保健センターのワクチン担当のスタッフが、センター内のワクチンが欠品し保健行政区に相談しても供給が間に合わないという状況を
共有したところ、保健センター長が近隣の保健センターに連絡し、ワクチンを供与してもらうことができました。

また、夜に出産することになったときに保健センターに助産師がいるかわからず不安、という妊婦さんからの声で、
助産師さんの夜勤が強化された例もあります。

会議でのコミュニケーションが、地域の保健状況を改善する一つのカギとなっています。
【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

緊急トリアージの研修

8月29日から3日間、緊急トリアージの研修を、16の保健センター、4保健行政区、郡病院のスタッフを対象に行いました。講師となったのは保健省の職員、国立小児病院医師、州保健局母子保健部長、州病院小児医師です。

以前、緊急にケアが必要な子どもを村から保健センターに搬送する手順書と仕組みを導入したところ、村から保健センターへの搬送件数が増加しました。

しかし、重病の子どもの緊急な対応や保健センターから郡病院への緊急搬送の判断について適切な知識を持っているスタッフがほとんどおらず、対応が間に合っていないことが判明しました。
そのため、保健センタースタッフ及び郡病院スタッフの緊急対応能力を向上するため研修が実施されました。

保健センタースタッフと郡病院スタッフの緊急トリアージの評価能力が向上し、村・保健センター・郡病院 の切れ目のない連携が促進されることを期待しています。

【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】


TOP