PHJ本部スタッフによる現地からの報告

PHJ海外事業部の徳地(助産専門家)です。
10月3週目より事業地シェムリアップへ出張中です。

今回は、プロジェクトの活動進捗モニタリングと、
遠隔地にある保健センターで働く助産師への聞き取り調査などを
行うために来ています。

事業対象地の保健センターにおいて、保健センター長や助産師より母子保健サービスに関する様々な
聞き取り調査を行いました。

遠隔地の保健センターで妊婦健診や分娩介助を行っている助産師からは、
「分娩後の出血に対応できるようなスキルアップの研修を受けたい」、
「子癇*に関する知識や対応に関する研修を受けたい」
などの声が聞かれました。遠隔地の保健センターで働く助産師にとってはどちらも重要な知識とスキルです。
保健センターでは対応できない症例をいち早く診断できるための助産師の能力強化、
異常のある妊産婦を搬送できる保健システムの強化はPHJが現在取り組んでいる支援の一つです。

地域で活躍する保健ボランティアが定期的に保健センターに集まり、
意見交換や保健知識を学ぶ保健ボランティア会議にも出席しました。
35㎞離れた村からの参加者もおり、保健ボランティアのモチベーションの高さが伺われました。

PHJが作成した健康管理ノートを参加した保健ボランティア全員に配布し、
このノートを活用して村人の情報取集やモニタリングが行えるよう、記入方法についてPHJ現地スタッフが説明を行いました。
記載方法について活発な意見交換がされており、今後このノートを活用した住民の健康状態の記録が円滑に行われることが期待されます。

今回の出張における新たな発見の一つとしては、
現在においても遠隔地では伝統的産婆(TBA)が重要な役割を担っているということでした。
遠隔地においては、保健センターまで到着する前に間に合わず道端で出産してしまうということもあるようです。
そのためにTBAが保健センターまでの付き添いをするケースが多いようです。

本事業では保健施設での出産や医療者介助による出産の促進を目指していますが、、
陣痛が始まった後に、保健センターを訪問するか否か、また訪問するタイミングについての住民の判断に
大きな役割を担っていることが予想されます。
保健ボランティアに加え、地域で妊婦や住民から信頼を置かれるTBAにおいても
適切な保健知識や保健施設での出産の推奨、訪問するタイミングなどについて保健知識の教授が重要であると感じました。

数時間前に保健センターで生まれたばかりの赤ちゃん

現在ある仕組みや人材を有効に活用して、すべての妊婦が安心・安全なお産ができるよう、
地域の連携強化、搬送システムの強化、人材の能力強化などを引き続き行っていく必要があると再認識しました。

*子癇(しかん)とは​
子癇とは主に妊娠20週以降にはじめて起きるけいれん発作(てんかんや二次けいれんではないもの)のことで、
初産婦(初めて妊娠、分娩する女性)や若い妊婦、妊娠高血圧症候群の人に多いといわれています。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

保健センターまでの道のり

保健サービスへのアクセスの改善は、PHJの取り組みにおける大きな課題。
「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」
ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)を達成するには
物理的アクセス、経済的アクセス、社会慣習的アクセスの3つのアクセスの改善と、提供されるサービスの質が高まることが重要です。
今回はPHJの事業地における
物理的アクセスの困難さの一例をご紹介します。
カンボジアは現在雨季。
写真は今月撮影した農村地の道路。ほぼ川のような状況です。

村から医療施設である保健センターまで車で1時間半かかるとのこと。

4輪駆動の車でなければ渡れない、そんな箇所も多々あります。


村に住む人のほとんどは車は持っておらず、バイクで移動します。
この悪路を越えて保健センターに行く、というのは困難なのだと改めて感じます。
そしてたどり着いた先で適切なケアが受けられなければ意味がありません。

私たちが新しい医療施設を設置したり、医療者を配置することは困難ですが、
いざというときのコミュニティの連携・協力体制づくりを支援したり、
このような農村地域でのよりよい保健サービスを提供できるように支援します。

有効な保健ボランティア会議のために

保健ボランティア会議は、保健センタースタッフと保健ボランティアの連携を図る大事な機会です。
村での感染症の流行、妊娠・出産・死亡、住民の健康状態などの情報共有、保健センターや行政からの連絡、地域保健活動の提案・検討などが行われます。
また、地域行政機関・保健センター・保健ボランティア間の意思の疎通をはかると共に、相互の信頼関係を深め、連携の強化を目指しています。
PHJはこの会議の有効性や効率性を高めるために、定期的に観察し、フィードバックを行います。

8月は、対象となる保健センターで開催された保健ボランティア会議に参加しました。

たとえばある保健センターでは、会議の最後に保健ボランティアさんからの質問に答える形で必ず保健知識の復習を行います。
保健ボランティアさんが地域住民に聞かれて困っていることなどを質問し、保健センタースタッフからその場で回答が得られるため、大変有意義に会議が活かされていました。
そもそも会場が自宅から遠いために参加できないというケースもあります。

こうした課題を確認・把握し、よりよい運営に向けたアドバイスや改善策の提案を進めていきます。
【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

助産師会議の再開

6月27日と28日の2日間にわたり、ソトニクム保健行政区にて助産師会議(MCAT会議:Midwife Coordination Alliance Team会議)を開催しました。この会議は、助産師を中心とした関係者が、妊娠や出産に関わる課題や状況を共有したり、解決策を模索します。お産の現場に直結する重要な場でありながら様々な理由により開催されていませんでしたが、保健システム強化支援の活動として会議を再開しました。

会議には、シェムリアップ州保健局から2名、シェムリアップ州病院から4名、ソトニクム保健行政区から3名、リファラル病院から4名、保健センターから60名のスタッフが参加しました。

州保健局母子保健部長と保健行政区母子保健部長がファシリテーターとして会議を進行しました。 まず、ファシリテーターと州病院の医師から、分娩後異常出血についての講義が行われました。講義では、その予防と処置について説明されました。また、緊急搬送時にショックパンツを使用することで、出血量を減らし、ショック状態を改善することができることが説明されました。ショックパンツは、脚や腹部に空気を入れて圧迫することで血圧を上げる装置で、その使い方や注意点についても解説がありました。

次に、緊急搬送の現状についての情報共有が行われました。参加者は、自分たちが経験した事例をもとに、緊急搬送時に遭遇した問題や対処法を発表しました。問題として挙げられたのは、搬送先の確保や連絡の不十分、患者や家族の同意や費用負担の問題、交通手段や道路状況の悪さなどでした。対処法として提案されたのは、リファラル病院と連携して搬送先を速やかに確認すること、患者と家族に緊急搬送の必要性や費用負担の方法を説明すること、交通手段や道路状況に応じて最適なルートや時間帯を選択することなどでした。
会議では、参加者が積極的に意見交換を行い、リファラル・システム強化のための具体的なアクションプランも作成しました。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

現地事務所での事業オリエンテーションの実施

新しい事業の開始と共に、PHJカンボジア事務所が新体制になりました。
新しいスタッフも含めて、チーム全員で事業オリエンテーションを行いました。

事業を円滑に進め、活動の効果をもたらすためには、カンボジア事務所のチームワークが不可欠です。そのため、チーム全員がベクトルを合わせ、共通の理念や考えのもとに行動することが大切です。
そこでカンボジア事務所スタッフ全員で意見交換の場を設けました。

例えば、このようなテーマでの意見交換。

PHJの取り組みは「援助」ではなく現地の人々の自立を目的とした支援活動。
現地の人々が支援に「依存する」ことにならないように配慮しなければなりません。
この点について、「活動をするときに必ず目的を明確にすること」「現地の人々の自尊心向上に努めること」「自分たちが見本となること」などの意見があげられました

こうした意見交換を通して、カンボジア事務所のチーム全員が事業を進めるうえでの指針を確認し、これからの活動を進めてまいります。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

シェムリアップ州における新事業の開始に向けて

4月にコンポンチャム州からシェムリアップ州にPHJカンボジア事務所を移転し、
「シェムリアップ州ソトニクム保健行政区における安心安全なお産のための保健システム強化支援事業」を開始しました。
4月末に本事業のキックオフミーティングをシェムリアップ州保健局で開催しました。

州保健局長と州保健局スタッフ、ソトニクム保健行政区長と母子保健担当スタッフ、そして、リファラル病院長と保健行政区の保健センター長など事業の関係者が参加しました。

プロジェクト目標とモニタリング指標、活動内容と実施タイムテーブルを発表した後、
参加者からは研修の参加人数や実施日程に関する質問がありました。
また、各保健センターにおける課題が共有され、具体的な活動内容についての意見交換も行われました。
今後もカウンターパートとのコミュニケーションを図り、連携してプロジェクトを進めていきます。

【本事業はJICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

活動の持続性と自立のために

2019年10月に開始した「子どものケア支援ネットワーク強化事業」は本年3月末に完了しました。

PHJの支間が終了した後も、活動を継続していくための会議が保健行政区にて3月半ばに開催されました。
会議には、保健行政区から5人、リファラル病院から3人、そして4つの保健センターから8人が参加しました。
これまでの活動を振り返り、成果を確認した後、子どもの健康な成長発達が促進される環境を維持するうえでの改善策や工夫について話し合われました。

保健センターの24 時間サービスの確立・提供、保健センターの利用促進、村での保健教育の継続を実現していくため、
地域行政当局と保健センター、保健センターとコミュニティや保健/母子保健ボランティア間の連携や協力関係の強化、そして、コミュニティとのネットワークは、
今後も強化していく取り組みとなりました。
これらの取り組みは保健行政区が中心となって今後も地域の健康を守るためにけん引していくこととなります。


【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しました。】

家庭訪問で一人ひとりに寄り添った母子保健教育を

母と子の健康改善のために、母子保健ボランティアさんによる保健教育を支援しています。

地域住民を対象にした集団による保健教育とともに、
彼女たちは戸別に家庭を訪問して、妊婦さんや産後のお母さんだけでなく、家族も一緒に母子保健教育を行います。
一人ひとりの健康状態を確認し、妊娠・出産・子育ての悩みや不安の相談に応え、必要に応じて保健センターに紹介します。
個々の状況を理解しながら、一人ひとりに寄り添った保健教育活動を行います。


以前にもお伝えした妊産婦の健康を害する恐れのある風習についても、家庭訪問で妊産婦だけでなく家族にもお話しをすることで、健康に対する家族の理解も進み、意識や行動の変化が起こりやすくなっています。

また一つのご家庭にご近所の母子に来てもらって保健教育を実施することもあります。ご近所のお母さん同士のつながりも大切ですね。

【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】

成田コスモポリタンロータリークラブ様の現地視察

2月20日と21日、成田コスモポリタンロータリークラブ様が、現地視察のためにカンボジア・コンポンチャム州の事業地を訪問しました。「地方農村遠隔地における感染症予防プロジェクト」を支援してくださっています。

同クラブは、コンポンチャム州の保健医療の分野にPHJを通して10年にわたり支援をしてくださっています。長年の支援への感謝の気持ちを込めて、事業地のパートナーであるストゥントロン保健行政区で寄贈式を行いました。

長年のご支援に感謝する記念プレートの授与

農村地の衛生キャンペーンにはクラブの方も参加し、保健センタースタッフが行う手洗い指導のデモンストレーションも行っていただきました。

健康に暮らしていくための衛生に関する基礎知識を受けることができました。

石鹸やタオル、洗剤などの衛生グッズを配布しました。

このようなPHJの地域レベルでの草の根の活動に参加していただき、
寄付が活かされている現場の実情や取り組みを体験を通して知っていただく機会となりました。

子どもの健康状況のきめ細かな評価と把握のために

保健センター(医療施設)では、一人ひとりの子どもの健診結果を記録簿に記入し、管理しています。
記録簿をみれば、成長、発達の様子を経過とともに把握でき、より適切な指導やケアにつながります。

健診の様子
乳幼児健診の記録簿

この健診情報の記録簿の仕様はカンボジア国内で統一されていますが、最近、仕様が変更しました。変更点は乳幼児の栄養状態を評価する項目が追加されたこと。子どもの健診時に栄養状態を確認することで、栄養不良の予防や栄養状態の改善に役立てることができます。

コンポンチャム州の保健局の要請で、PHJの支援を通して医療者向けに新仕様の記録簿の解説と書き方に研修が1月末に開催しました。保健省のスタッフが講師となり、州保健局、ストゥントロン保健行政区、保健センター、地方病院のスタッフが研修を受けました。

新仕様の記録簿の研修


地道な研修ですが、乳幼児の健康状態の改善に向けた大きな一歩と言えます。
【本事業は、外務省日本NGO連携無償資金とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。】


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