カンボジアにおける保健の課題
カンボジアは、1970年代から1990年代にかけての内戦により、保健医療システムは崩壊。その後、カンボジア政府と国民が再建・復興に取り組む中、国際社会からの支援も受け、5歳未満児の死亡率や妊産婦の死亡率が低下し、国民の健康状態は改善されてきました。このような中、都市部では先進国でみられる慢性疾患や生活習慣を起因とする疾病が増え、農村部では感染症や栄養不良に起因する疾病が依然多く、都市・地方間での健康格差が生じています。
また、医療施設が増加する一方で、医療従事者の不足や偏在、保健サービスの質の低さという問題も出てきています。
カンボジアの基礎情報
カンボジアにおけるPHJのこれまでの取り組み
PHJの取り組み
シェムリアップ州ソトニクム保健行政区における安心安全なお産のための保健システム強化支援事業
【背景】
シェムリアップ州は、多くの妊婦が妊婦健診を受診する一方で(9割以上)、保健施設での出産や医療者の介助による出産が少ない(約5割)という保健課題を抱えています。また、活発な観光業と国際社会からの支援により発展を続ける州都と、それ以外の農村地域との大きな格差が存在します。ソトニクム保健行政区は、妊婦健診受診率、医療者介助分娩率、施設分娩率は州内他地域と比較していずれも最も低く、多くの女性が取り残されている現状があります。
【活動概要】
すべての女性の安心安全なお産を促進するために、地域の保健システム強化を支援する取り組みを進めます。
活動の期間 | 2023年4月4日~2026年4月3日 |
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実施地域 | シェムリアップ州ソトニクム保健行政区 |
対象者 | 【直接裨益者】妊婦:約19,662人(3年間推計)、州保健局スタッフ2人、保健行政区スタッフ5人、リファラル病院スタッフ10人、保健センタースタッフ約100人、保健ボランティア約160人、 【間接裨益者】地域住民 約30万人 |
活動内容 |
①リファラル病院と保健センターの助産サービスが向上し、連携が強化される(サプライ側)
保健行政区での助産師会議(MCAT会議:Midwife Coordination Alliance Team会議)の開催、保健行政区スタッフのサポーティブ・スーパービジョンの勉強会と実施、リファラル病院スタッフの緊急トリアージ研修、助産師対象「セーフ・デリバリー・アプリ」と「E-Learning用ビデオ教材」の研修、助産師の能力強化研修(人間的なお産、ホスピタリティ)、保健センタースタッフ会議のモニタリング、保健センタースタッフの研修、保健行政区スタッフによるリファラル・システムと保健センター24時間体制のスーパービジョン ②ボランティアの能力が強化され、保健センターとコミュニティの連携が強化される(コミュニティ)
ボランティア会議のモニタリング、ボランティア能力強化研修、ポジティブな出産経験のプロモーション活動 ③地域住民の母子保健、特に安全な妊娠・出産に関する知識が向上する(ディマンド側)
ボランティアによる地域保健活動の教材作成、保健教育・啓発活動、妊婦の個別訪問、保健啓発Q&Aセッション、保健センターにおける24時間体制の周知活動 |
目指す成果 |
①リファラル病院と保健センターの助産サービスが向上し、連携が強化される
②ボランティアの能力が強化され、保健センターとコミュニティの連携が強化される
③地域住民の母子保健、特に安全な妊娠・出産に関する知識が向上する
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資金 | JICA草の根技術協力事業とサポーター企業・団体、個人の皆様からのご支援により実施しています。 |
活動レポート
基礎情報
カンボジア | 日本 | |
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面積 | 18.1万平方キロ | 37.8万平方キロ |
人口 | 約1,576万人 | 約12,800万人 |
言語 | カンボジア語(=クメール語) | 日本語 |
宗教 | 仏教 96.9%、イスラム教等1.9%、キリスト教0.4% | 神道 47%、 仏教 42.8%、キリスト教 2.7%、 その他 7.6% |
平均寿命 | 70歳 | 85歳 |
出生率 | 2.6人 | 1.5人 |
成人識字率 | 74% | 100% |
乳児死亡率 (出生1000対) |
23 | 2 |
5歳未満児死亡率 (出生1000対) |
27 | 2 |
麻疹予防接種率(1回目) | 81% | 96% |
妊産婦死亡率(調整値) (出生10万対) |
160 | 5 |
訓練を受けた人による 分娩介助の割合 |
89% | 100% |
HIV感染率(15-49歳) | 0.5% | 0.1%未満 |
出典:国連児童基金(UNICEF) 「世界子供白書2021」、カンボジア政府計画省統計局(2019年)、日本政府文化庁(2021年)