(期間:2001年~ 対象地域:チェンマイ県、チャイヤプーム県、スパンブリ県)
がんがタイ人の死亡原因の1位になってから久しく、中でもタイ人女性においてがんによる罹患率・死亡率の第2位が子宮頸がんとなっています。年間約10,000人が子宮頸がんを患い、5,000人以上が命を落としています(GLOBOCAN2008)。しかし、チェンマイ県では早期発見に有効な検診受診率が25 %と低い状態です(Chiang Mai Public Health Office 2009)。また、食の欧米化などにより乳がんの罹患率・死亡率も増加しているものの、女性住民の間では乳がんに関する知識が乏しい状況です。
PHJでは、できるだけ多くの人々に検診受診の呼びかけが行えるよう、ヘルスボランティアと看護師の教育に力を入れています。ヘルスボランティアには、子宮頸がんと乳がんの知識を教え、看護師には女性住民に正しい知識と技術を持って検診を実施できるよう実地訓練を含めた教育をしています。検診の結果、がんが発見された場合、適切な医療機関に搬送し、その後のフォローアップ活動を行うことで、対象地域での子宮頸がん・乳がんによって命を落と落とす女性を減らすことを目指しています。2010年11月より開始した3年プロジェクトでは、移動検診車も活用しながら、チェンマイ県内の6郡で、30歳から60歳の女性125,100人を対象に、子宮頸がん検診受診率50%以上、乳がん自己触診率70%以上、検診の結果異常が見つかった場合の精密検査と適切な治療の受診100%を目標としています。
(当事業は外務省日本NGO支援無償資金協力の支援をうけて実施しています。)
活動レポート
活動内容
看護師 トレーニング ワークショップ
目的は、看護師の子宮頸がん検診及び乳がん自己触診法の知識・技術を高めることにあります。2日間にわたる理論と実践を学び、チェックリストで実践技術が確認されます。
ヘルスボランティア トレーニング ワークショップ
ヘルスボランティアは、子宮頸がん及び乳がんの正しい知識を女性住民にどう伝えていくかの講義を受け、乳がん自己触診の方法を地元の看護師から学びます。研修を受けた後は、各家庭を訪問したり村の集会の場を利用し、女性住民に検診参加を促します。
マスターヘルスボランティア トレーニング ワークショップ
選抜されたヘルスボランティアが、子宮頸がん及び乳がんについての知識を身につけるための特別研修を受けます。通常のヘルスボランティアをまとめる役目を担う他、検診キャンペーン時の検診器具の準備など、看護師のサポートとしての役割が期待されます。
検診キャンペーン
対象地域の女性に対して健康教育、子宮頸がん検診、乳がん自己触診、医療機関紹介といったサービスを提供します。
移動検診車による僻地での検診
学校やお寺、工場内での検診が可能となり、物理的・心理的距離のある女性にも検診に参加してもらうように働きかけます。
これまでの活動について
2008年から2010年の3年間
対象地域 チェンマイ県の2郡(メリン郡・メタン郡):チェンマイ県は北部タイの中核都市
2007年からは、チェンマイ県メリン郡およびメタン郡(対象女性40,530人)で子宮頸がん検診推進事業を行い、事業終了時には、検診受診率62.6%を達成しました。これは行政が設定している子宮頸がん検診受診率50%を上回る受診率であり、チェンマイ保健局からも高く評価されています。
2001年より2007年の7年間
対象地域 チャイヤプーム県: 首都バンコクから約330km、タイ東北部の典型的農村地帯。タイで最も経済的に貧しい地域。
スパンブリ県: バンコクから車で北に約1時間行った場所です。典型的な農村地帯。
実施対象をタイ国立がん協会と協議の上、2001年よりチャイヤプーム県のコルンサワ郡(対象女性約20,000人)、クラオ郡(対象女性約19,500人)、ノンサンガ郡(対象女性約9,800人)、チャトラス郡(同30,000人)、スパンブリ県のコルンサワン郡(対象女性約22,000人)、ドンチェディ郡(対象女性約17,000人)の6地域で活動してきました。事業終了時には、子宮頸がん50%の検診受診率を達成しました。
※子宮頸がんとは
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因ですが、これは性交渉の経験のある女性ならば、多くが一生に一度は感染するウイルスです。一部の人の中では、この感染が長期化し、細胞が変化を起こし(異形成)、さらにそれが進行するとがん細胞に変化することがあります。しかし、定期的な検診で異形成の段階で発見できれば、比較的簡単な治療で治すことができるため、「予防できるがん」だと言われています。